日本がする戦争とはどういうものになるか?
- 植松 大一郎
- 2019年10月18日
- 読了時間: 4分
「日本は戦争をするのかー集団的自衛権と自衛隊」半田滋著、岩波新書、2014年発行
まさにこの本は、集団的自衛権とはどのようなものか、憲法上はどのような問題を抱えているか、一応この部分が理論編という事になり、これに対して現実的に自衛隊がどのようなことができるのか、どのようなことをこれまでしてきたのか、というように実践編となっている。
日本が戦争をすると想定される事態が集団的自衛権のテーマである。この本質は米軍に対してどのような協力がありうるのかという論理から集団的自衛権の行使というテーマが出てきている。

一方で自衛隊は憲法の枠組みの中で武器を使わないPKOのような活動を積み重ねてきている。これも国際的評価が非常に高い。特に道路建設、橋の建設など軍隊がやらなくてもと思われるようなことを彼らはやっている。日本でも大手ゼネコンができることぐらいのことは自衛隊で全部できるそうだ。
結論的にいうと今の自衛隊、政府には戦争はできないしそのような実力もない、金もない、また周辺事態法で言われたようにアジア周辺で日本を取り巻く政治環境で現実的に戦争が起きる可能性は今のところ非常に少ない。むしろ海外派遣問題のほうが現実味を帯びる。憲法的に現在の9条に関する解釈改憲手法で進んで行ったときに、特に海外での武器使用による自衛隊員の死亡問題に発展する。
1、集団的自衛権(p47)は冷戦時友好国の囲い込みのために米国が生みの親となった。国連憲章51条安保理が必要な措置をとるまでの間、個別的自衛権、集団的自衛権の行使を認めている。具体的に各国でベトナム戦争時、イラク侵攻時などにこの権利行使が使われている。しかしよく見ると米軍との関係が圧倒的に多いように思われる。世界は米軍で動いている。国連軍といっても米軍中心であり米軍の指揮下に置かれる。日本はこの二つの権利は認められているが、憲法9条により集団的自衛権は行使はしないというのが今まで過去の自民党の見解であった。しかし安倍政権になってから、この行使容認を憲法の解釈変更により実施出来るようにしようというのが現在である。米国の誤った認識による戦争に引きずり込まれる恐れがこの権利には付きまとう。(アーミテージなどジャパンハンドラーといわれる人たちの思想に引き込まれている。)
2、具体的な集団的自衛権の発想の基本は北朝鮮有事の時(第2次朝鮮戦争)の対処法シナリオである。K半島事態対処計画というのが自衛隊にあるそうだ。北が日本をせめて来た時に、ゲリラ戦になった場合は対応の方法がない。また最近の北朝鮮のスカッドミサイルが発射された時7分後には福岡を直撃する。米国の衛星探知機は探知はできるが、日本のイージス艦では探知も迎撃もできない。(p147)迎撃する地対空ミサイルPAC3は30基ほどしかなく、日本全土を守るためには1000基くらい必要とのことであるがお金がいくらあっても足りないので無理のようだ。
また朝鮮半島の南北での有事の際、難民が日本に押し寄せてきた場合、日本で対応できるのは九州管轄の西部方面隊で1万人くらいが限度、警察は3万5千人が限度。想定する22万人はどうにもならない。やはりここから言えることは自衛の論理がしっかりとなければならない。自国の防衛という問題をしっかりできないで海外派遣などありえない。
3、その他には、自衛隊の積み重ねてきたPKOなどのテーマで多くの海外へ派遣されている。武器使用のない後方支援活動であるが、国際的評価も高く、モンゴルやベトナムの軍隊から日本に勉強に来ている。また政治家に関しては非常な不信感を抱いている自衛官が多い、という事。たんに行ってこい、というばかりで何をしているのか、どんな問題があるのかなど知っている政治家はほとんどいないそうだ。現地に行った政治家は阿部さんくらいで(2013年アフリカのジブチ(*)、ソマリヤの海賊対処のための現地本部)それも3時間程度だった。ほかの国の大統領は現地の軍隊に何度も激励に行っている。自衛官が現地で死んだ場合、国民を守るという点と比較すると名誉感は低い。靖国神社に祀るか否かなどの問題がある。自衛隊の給料(一佐47歳で1200万/年)が意外に高いとか、海外勤務は最大で24000円/一日、三か月で220万円、死んだ場合の自衛隊からの支給額は、戦争の場合と、PKOの場合では異なるとか。私の知らないことがたくさん出てくる。自衛隊の方たちの本当の意欲、意識はどういう処にあるのかを知りたく思う。
この本は憲法と現実の自衛隊を知る入門編という位置づけだ。
*ジブチはDJIBOUTI紅海の一番南、アデン湾の始まる当たりの小さな国、ソマリアの北
Comments